はじめに
金融庁のデータによると、2025年12月末時点でのNISAの口座数、約2,821万。累計買付額、約71兆円。政府が2027年末までの目標として掲げていた56兆円は、すでに軽々と超えました。
ですが、投資枠の上限近くまで使っているのは、20人に1人だけ。7割の口座は、年間60万円以下です。そして意外なことに、人口あたりで最もNISAを使っているのは、50代ではなく30代でした。この「NISAの実態」6回シリーズでは、金融庁の一次データを一つずつ分解しながら、その実像を見ていきます。
71兆円――だが、その中身は?
2025年12月末時点で、NISAの累計買付額は71兆3,846億9,497万円。ここで重要なのは、「累計買付額」だということです。
金融庁の集計は、旧NISAの始まった2014年から2025年までの買付額を積み上げたもの。今、NISA口座の中に71兆円分の資産がそのまま残っている、という意味ではありません。71兆円と現在の時価残高との差を、そのまま「売却された金額」や「投資家の損失」とみなすこともできません。買付額、売却額、評価損益、時価残高——これらは、それぞれ別の指標です。
数字が大きいほど、意味を正確に読む必要があります。
年代別に見るNISA:口座数は50代が最多だが..
NISA口座数は2,820万6,434口座。年代別では、50代が553万1,813口座で最多。40代が538万1,768口座、30代が494万5,690口座と続きます。この3世代だけで、全体の半分を超えます。
| 年代 | 口座数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 10代 | 13万4,413口座 | 0.48% |
| 20代 | 336万8,068口座 | 11.94% |
| 30代 | 494万5,690口座 | 17.53% |
| 40代 | 538万1,768口座 | 19.08% |
| 50代 | 553万1,813口座 | 19.61% |
| 60代 | 417万5,854口座 | 14.80% |
| 70代 | 307万8,095口座 | 10.91% |
| 80代以上 | 159万733口座 | 5.64% |
ここまでは、単純な合計です。ですが、50代の人口はもともと他の世代より多い。口座数の多さは、その世代がNISAを「よく使っている」ことを示しているとは限りません。年代別の人口で割ってみると、違う顔が見えてきます。
人口あたりで見ると、実は30代がトップだった
総務省の人口推計(2025年5月1日現在・確定値)をもとに、年代別のNISA普及率(口座数 ÷ その年代の人口)を計算すると、次のようになります。
| 年代 | NISA普及率 |
|---|---|
| 20代 | 26.4% |
| 30代 | 37.5%(最高) |
| 40代 | 33.4% |
| 50代 | 30.2% |
| 60代 | 28.1% |
| 70代 | 19.1% |
| 80代以上 | 12.3% |
絶対数では50代が最多。でも、人口あたりで見ると、最も高いのは30代の37.5%です。40代が33.4%で続き、口座数トップだった50代は30.2%で3位に下がります。
理由は単純です。50代の人口が、そもそも他の世代より多いから。「50代が中心層」に見えていたのは、世代人口の大きさによる部分が大きく、実際に積極的にNISAを使っている割合で見れば、30代・40代のほうが上、というのが実態に近いと言えます。
上限360万円を使い切っているのは、20人に1人だけ
新NISAの年間投資枠は最大360万円。では、2025年にその上限近くまで買った口座は、どれくらいあったのでしょうか?
金融庁のデータによると、2025年中に「300万円超〜360万円以下」を買い付けた口座は163万8,944口座。年間買付額の集計対象28,558,925口座に対して、5.74%——約20人に1人です。
一方、「0円超〜60万円以下」は1,010万5,117口座。「0円」を含めると2,055万1,605口座、割合にして71.96%。2025年の買付額を見る限り、約7割の口座は60万円以下でした。
71兆円という「合計」の裏には、20人に1人と、7割という、まったく異なる二つの実態が同居しています。
56兆円の目標突破は、何を意味するのか
政府はNISAの買付総額について、2027年末までに56兆円という目標を掲げていました。2025年末の累計買付額は71兆3,846億円ですから、目標額を大きく上回っています。制度の普及という点では、疑いようのない大成果と言えます。
ただし、この「口座数」「買付額」という利用状況データだけでは、NISAを使った個々人の運用成果——実際にいくら増えたか、あるいは減ったか——までは分かりません。NISA開始以降、S&P500や全世界株式(オルカン)などのインデックスに継続して積み立ててきた人の多くは、この期間の株式相場の上昇を考えれば、実際に大きな含み益を得ている可能性が高いでしょう。
ですが、それを検証するには「実際に何を買ったか」という別のデータが必要です。これは第5回で扱います。今回のデータが示しているのは、あくまで「どれだけの人が、どれだけの規模でNISAを使ったか」という利用の実態であり、それ自体が個々の投資成果を語るものではない、ということです。
ここから6回、71兆円を分解します
このシリーズでは、巨大な「71兆円」をそのまま眺めるのではなく、少しずつ分解していきます。
- 0150代が主役?NISA累計71兆円の正体。2,821万口座を、数字から読み解く(今回)
- 0250代でも30代でもない。NISAで一番投資している年代は?
- 03年間買付額の分布を見る
- 04成長投資枠とつみたて投資枠を見る
- 05日本人が実際に何を買ったのか
- 06結局、NISAは成功しているのか?
2025年末のNISAは、約2,821万口座、累計71兆3,846億円という巨大な規模になっています。しかし、今回分かったのは単純に「大きくなった」ということだけではありません。
口座数だけを見れば50代が中心層に見えますが、人口あたりの普及率では30代がトップ。そして年間上限近くまで使ったのはわずか5.74%、7割の口座は60万円以下。「71兆円」という一つの数字の裏に、世代ごとの違いと、利用額の大きな幅という、まったく違う二つの実態が同居しています。
次回は、この年代ごとの違いを、さらに深く掘り下げます。30代が本当にNISAを使いこなしている世代なのか。年代別の買付額にはどれくらいの差があるのか——ここから先は、再度金融庁の一次データを深く検証して行きます。
金融庁「NISA口座の利用状況に関する調査結果(令和7年12月末時点)」
https://www.fsa.go.jp/policy/nisa/20260703.html
金融庁公表Excel「NISA口座の利用状況(2025年12月末時点)」
総務省統計局「人口推計(2025年(令和7年)5月1日現在・確定値)」
本記事内の数値は、上記の公的統計をもとに、運営者が確認・作成したものです。ただし、以下の点にご留意ください。
- 本記事で使用しているNISA関連データは速報値です。金融機関からの報告内容の変更や訂正により、後日公表される確報値と数値が異なる場合があります。
- 年代別構成比・普及率など、公的統計をもとに運営者が算出・集計した数値が一部含まれます。四捨五入の関係で、合計が100%にならない場合があります。
- 年代別普及率は、NISA口座数(2025年12月末時点)と人口(2025年5月1日時点)という異なる時点のデータを組み合わせて算出した参考値です。実際の普及率とは若干の差が生じる可能性があります。
- 記事中の数値・図表は作成時点のものであり、その後の追加公表・訂正を反映していない場合があります。
- 内容については可能な限り精査していますが、正確性・完全性を保証するものではありません。最新かつ正式な数値は、必ず金融庁の公式発表ページをご確認ください。
- 本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品・投資手法を推奨するものではありません。投資に関する最終的なご判断は、ご自身の責任において行っていただきますようお願いいたします。
