新NISAで元本割れが怖い人へ|不安の正体とリスク許容度の考え方
新NISAを始めたあと、多くの人がぶつかるのが「どこまで投資額が下がったら危険なのか?」という漠然とした不安です。
「元本割れしたらどうしよう」「どのタイミングでやめるべきか分からない」——こうした悩みを抱えたまま投資を続けている人も少なくありません。
この不安の正体は、「元本割れとは何か」「自分にとって本当に危険なラインはどこか」という定義が曖昧なままになっていることにあります。
この記事では、新NISAにおける元本割れの考え方と、自分に合ったリスク許容度の決め方を整理します。さらに「長期積立だから損切りしない」という単純な判断ではなく、「いつ対応が必要か」を見分ける基準についても解説します。

元本割れって、結局どれくらい下がったら起こるんですか?
「なんとなく怖い」のまま投資してて……具体的に考えたことがないです。

では今日は、その「なんとなく怖い」を卒業する日じゃな。
実は、「相場が何%下がったか」と「自分が元本割れしたか」は別の問題なんじゃよ。
積立投資のメカニズムを理解すれば、不安は「対策できるもの」に変わるからここで整理してみようかの。
元本割れの定義を正確に理解する
最初に確認すべきは「元本割れ」の定義です。投資家の行動心理に大きく影響するため、きちんと理解することが重要です。
投資した金額の合計よりも、現在の評価額が下回っている状態のことです。
ただし積立投資の場合、この定義だけでは不十分です。同じ「相場が-20%下落」でも、積み立て期間によって「元本割れしているかどうか」がまったく異なる結果になるからです。
以下は「毎月3万円を平均年利回り5%で運用中に相場が直近で20%急落した」場合の3年目と10年目との比較シミュレーションです。
※実際の運用成果は市場環境・タイミングにより異なります。あくまで概念理解のためのイメージです。
積立投資では「ドルコスト平均法」により、相場が下がっているときに同じ金額でより多くの口数を購入できます。その結果、平均購入単価が下がり、相場の下落率よりも実際の損益率が小さくなる傾向があります。
つまり、「相場が何%下がったか」と「自分の元本が何%減ったか」は、積立期間によってまったく別の数字になります。
- ✓同じ下落率でも、積立期間が長いほど元本割れしにくい傾向がある
- ✓「最高値からの下落率」と「自分の元本からの下落率」は別物
- ✓「何%下がったら危険か」は、投資期間や投資スタイル、商品や目的によって人それぞれ異なる

では、長期積立投資なら絶対に安全ってことですか?

よい質問じゃ。残念ながら投資に「絶対」はないんじゃよ。
ただ、金融庁が公表しているシミュレーションに、とても参考になるデータが示されてあっての。
金融庁データから分かる長期投資の傾向
金融庁が公表しているシミュレーションには、保有期間と運用成果のばらつきについて、興味深い傾向が示されています。
保有期間5年の場合
年間収益率が約-8%〜+14%程度と広い範囲に分布しています。
投資を始めたタイミングによっては、元本割れになるケースが存在します。
保有期間20年の場合
年間収益率が約+2%〜+8%の範囲に収束する傾向が見られます。
1989年以降の過去データのシミュレーションでは、元本割れとなったケースは見られませんでした。
・国内外の株式・債券に分散投資した場合の過去シミュレーション(1989年1月〜)
・このデータは過去の実績に基づくものであり、将来の運用成果を保証するものではありません。
出所:金融庁「はじめてみようNISA ガイドブック」(PDF)
このデータから分かること——そして見えていない部分
「過去のシミュレーションでは、20年間積立を続けた場合に元本割れとなったケースは見られなかった」
長期保有によってリスクが分散される傾向があることを示しています。
- 「20年持てば絶対安全」→ 誤り。過去データに元本割れがなかっただけで、将来も同じとは言えません。
- 「5年で元本割れするから必ず損切りすべき」→ 誤り。5年で元本割れの可能性はありますが、そのまま継続することで10年・20年後にプラスに転じる可能性もあります。
- 「長期積立だから損切りは絶対NG」→ 誤り。投資目的やリスク許容度の変化、生活状況によっては、見直しが適切な場合もあります。
長期積立だから損切りは必要ない?
長期積立投資における損切り・見直しの考え方
短期的な下落で売却すると、その後の回復局面での利益を失うリスクがあります。20年以上というロングスパンで見れば積立を継続する方が有利になりやすいというのが、データから導かれる基本的な考え方です。
① 生活資金が不足してきた場合
失業・大病・家族の急な支出など、生活防衛資金が底をつきそうになった場合。
まずは「売却」ではなく「積立の一時停止・減額」から検討してみましょう。
② 投資の前提が崩れた場合
ファンドの運用方針が大きく変更された、または信託報酬(コスト)が著しく上昇したなど、当初の投資判断の前提が変わった場合。
③ 精神的・身体的な健康に影響が出た場合(QOLの低下)
不眠が続く、日常生活や家族との関係に支障が出るなど、精神的な健康への影響が出た場合は、投資金額の見直し、停止、売却も適切な判断です。
投資は人生を豊かにするための手段です。健康を犠牲にしてまで続けるものではありません。
三空’s ポイント
「長期積立だから絶対に損切りしない」ではなく、
「投資を始めた時点での前提(生活状況・目的・健康)が変わったときに、冷静に見直す」

なるほど。投資に絶対はないということですね。

その通りじゃ。
絶対がないからこそ、自分に合ったリスク管理が必要なんじゃよ。
大切なのは、「今の自分のライフステージとリスク許容度を理解し、投資を始める前にしっかり言語化しておくこと」じゃ。
本当に見るべき3つの指標
「危険かどうか」を判断するとき、相場の数字だけを見ていると正しい判断ができません。自分の投資判断に本当に必要な3つの視点を確認しましょう。
-
投資元本からの損益率(実損益)
「相場が30%下がった」ではなく、「自分の元本が何%減ったか」を見ることが重要です。ドルコスト平均法の効果により、積立期間が長いほど実損益率は相場の下落率より小さくなる傾向があります。 -
生活への影響度
評価損が出ていても、生活が破綻しないか、教育費・住宅ローンなどの重要な支出に影響が出ないかを確認してください。「数字上の損失」と「実際の生活への影響」は別物です。 -
精神的な健康(QOL)への影響
毎日残高を見て不眠や強いストレスが続くようであれば、現在のリスク水準はあなたの許容度を超えています。投資は人生を豊かにするための手段であり、心身の健康を損なってまで続けるものではありません。精神的な健康への影響が出た場合は、投資額の見直しや停止も適切な判断です。
リスク許容度を正しく判断する4つのステップ
まず家計全体を整理しましょう。投資に使っていいのは、生活に使わない「余剰資金」だけです。万が一のお金を手元に残してから投資額を考えます。
- 保有資産の総額(預貯金・保険など):① ________万円
- 生活防衛資金(生活費の3〜6ヶ月分/すぐ引き出せる現金):② ________万円
- 投資に回せる余剰資金(上の2つの差額 ①-②): ③ ________万円
- 総資産に対する投資比率(余剰資金 ÷ 総資産):③÷① ________%
目安:投資額は総資産の30〜50%以内が安心
投資する割合が大きいほど、相場が急落したときの家計へのダメージも大きくなります。まずは少額からスタートし、慣れてきたら増やすことを検討しましょう。
※フリーランス・自営業の方は収入が不安定になりやすいため、生活費の1年以上を現金で確保してから投資を始めるのが好ましいとされています。
長期で保有するほど、一時的な値下がりを許容しやすくなります。「何年後に使うお金か」をまず確認しましょう。下の表はあくまで参考目安であり、将来の運用成果を保証するものではありません。
| 投資期間 | 目安となる許容下落幅 | ポイント |
|---|---|---|
| 短期 5年以内 |
−10〜20%程度 | 回復を待つ時間が短いため、リスクは小さめに |
| 中期 5〜10年後 |
−30〜40%程度 | 安定性と成長のバランスを意識したい時期 |
| 長期 10〜20年後 |
−50%前後 | 一時的な大暴落があっても、時間をかけて回復を待てる |
| 超長期 20年以上先 |
−60%以上 | 短期の暴落を気にせず積立を続けられる最も長い時間軸 |
※上記の許容下落幅はあくまで一般的な参考目安です。個人の状況・目的により異なります。
数字上の理論よりも、「実際に資産が大きく減ったとき、冷静でいられるか」という精神的な耐性が投資継続の成否を分けます。以下のシナリオを読んで、自分がどう感じるか確認してみてください。
- 仕事中や夜間に、何度もスマホで残高を確認してしまいそうですか?
- 損失のショックで、日常生活や睡眠に支障が出そうですか?
- 「戻らないかもしれない」という不安に負けず、積立を継続できますか?
- 「安く買えるチャンス」と冷静に捉えることができますか?
- すべて売って現金化(投げ売り)したくなりませんか?
- 精神的に耐え続ける自信がありますか?
少しでも不安を感じたら、リスクを下げましょう
上記のいずれかで「不安」「難しいかもしれない」と感じたなら、それがあなたのリスク許容度の目安です。現在の投資額を減らす、または値動きの小さい商品の割合を増やすなどを検討する余地があります。精神的な健康への影響が出た場合は、投資金額の見直しを最優先に考えるべきです。
※ ストレス耐性のシミュレーションはとても難しいのが現実です。頭ではわかっていても、実際に暴落を経験すると誰でも冷静でいられないものです。ただし、事前にシミュレーションをして投資行動を決めておけば、後は淡々と予定通りに消化するだけです。
「ほったらかし投資」が理想ですが、「何があっても何もしない」とは違います。暴落が起きる前に「どうなったら見直すか」を決めておくことが、感情的な誤判断を防ぐ最大の備えになります。
「私は、投資期間が____年以上あるため、
評価額が一時的に元本の____%まで下がっても運用を継続する。
ただし、以下の状況になったときは積立の停止・減額・見直しを検討する:
- □ 結婚・住宅購入・教育費など、予定外のまとまった支出が必要になった
- □ 失業・病気などにより、生活防衛資金(手元の現金)が底をつきそうになった
- □ 保有している投資信託のコスト(信託報酬)が著しく高くなった
- □ 投資先の国や経済状況が、構造的な衰退局面に入ったと判断した
- □ 評価損へのストレスで、精神的・身体的な健康に影響が出た
ルールは人生のステージに合わせていつでも更新してOK
重要なのは、暴落が起きてから考えるのではなく、平時に「見直しの条件」を決めておくことです。年齢・収入・家族状況・健康状態が変われば、リスク許容度も変わります。定期的に(年1回など)このルールを見直す習慣をつけると良いでしょう。
資産配分の決定:時間軸とリスクのバランス
自分のリスク許容度が把握できたら、具体的な資産構成(アセットアロケーション)に落とし込みます。「どの商品を買うか」より、「株式・債券・現金をどの割合で持つか」の方が、長期的な運用成果に大きく影響します。
| 運用期間 / リスク許容度 | 資産構成の例(参考) | 期待される特性 |
|---|---|---|
| 短期・守り重視 | 株式20% / 債券70% / 現金10% | 値下がりを抑え、元本を守ることを最優先にした構成 |
| 中期・バランス型 | 株式50% / 債券40% / その他10% | 成長を狙いつつ、債券でリスクを和らげるバランス型 |
| 長期・成長重視 | 株式80〜100% | 複利効果を最大化。大暴落を長期で乗り越える前提 |
※上記は一般的な参考例であり、特定の商品・銘柄を推奨するものではありません。
⚠️ 流行に流されないようにしましょう
「S&P500」や「全世界株式(オルカン)」は優れた商品ですが、これらは100%株式です。相場の急落時には一時的に資産が30〜50%減る可能性があります。SNSやランキングの人気だけで選ぶのではなく、「いつ使うお金か」「精神的に耐えられるか」を必ず確認した上で選びましょう。

つまり、自分のリスク許容度に合った投資をすることが大事なんですね。

その通りじゃ。
ひまりちゃんの人生、価値観、ライフステージで決めるんじゃ。
それが「リスク許容度を言語化する」ということの本当の意味なんじゃよ。
まとめ:データと自分自身の判断基準を持つ
この記事で示した4ステップを使って、自分に合ったリスク許容度を言語化してください。その基準があれば、下落局面でも感情に流されずに対応できます。
大切なのは「最初から完璧な基準を作ること」ではなく、「人生の変化に応じて基準を更新し続けること」です。年齢・収入・家族状況・キャリアなど、ライフステージが変われば、リスク許容度も変わります。
根拠のない不安を卒業し、データを参考にしながらも自分自身の判断基準を持った投資へ移行すること——それが新NISAでの長期投資を続けるための第一歩です。
📄 免責事項・出典について
本記事は金融庁「はじめてみようNISA ガイドブック」および「つみたてNISAの概要」を参考に作成した情報提供を目的としたものです。記載内容は作成時点の情報に基づいており、将来の運用成果を保証するものではありません。
投資には元本割れのリスクがあります。個別の投資判断・商品選択については、金融機関またはファイナンシャルプランナー等の専門家にご相談ください。
